正ちゃんがこんなに美味だとは知らなかったのです!
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1-4
2008-03-06 Thu 04:00
「咲さん…ね、で、誰かの使いで来たのかな?」
翔は上から咲を覗き込みながらまるで子供に向かってそうするように言った。
「ふふ…本当に何も覚えてないのね…?いいわ。あなたに渡すものがあって来たのよ…。」
咲は口の端を少しだけつり上げながら言った。そうして咲は翔の左手を取り自分の人差し指を噛み切ると血で翔の掌に何か記号のようなものを書きながら、翔には非常に聞き取りにくい声で何か呪文のようなものを唱えはじめた。咲が何かを唱えると同時に翔の左掌から発火するような熱さが次第に手首へと、そして肘あたりまで広がっていた。途中、翔は反射的に咲の手を払おうとしたが、その冷たい手はか弱そうな外見とは裏腹にまるで物理的に咲の手と繋がっているかのように固定されていたのだった。
「はい、おしまい。これで貴方には《小狐丸》が憑いたから。
 そうね…試しに喚んでみてくれるかしら。『召』と言えば出るはずよ。」
翔は自分の掌を見つめてみたが先程の記号も血の沁みすら無かった。

――それどころか、咲の人差し指にも傷はなかった。
ひとまず翔は言われた通りに左手を差し出し、唱えてみた。
「――召。」と。
その刹那、翔の左手には通常の打太刀よりは短い刀が握られていた。反りは深く、刃紋の整った美しい小太刀だった。
「これで《小狐丸》は貴方が喚べば貴方の手にある。
 元の体内に戻す時は『封』で戻るわ。」
「――封。」
翔がそう呟くと左手の中の小狐丸はそこに無かったかのように消えていた。
翔はいくつかの伝承の中で小狐丸の逸話は聞いた事があった。刀匠である三条宗近が朝廷より名刀の献上を依頼されたが思う程の刀が打てず、途方に暮れている折、宗近の氏神である稲荷明神が童子の姿で現れ宗近の相槌を打ち作刀を助け出来た刀であると――。しかし、当の小狐丸は消失してしまって現存しないと聞いていたが…。
「それでも貴方の手の中にある小狐丸は本物よ? そしてその霊性もね…。」
「…どうしてこんなモノを俺に…? 君は一体何者なんだ?」
胸の内を読まれたような気がして翔は背筋に氷を入れられたような気分を抑えながら言った。
「そしてもう一つ――。」
咲は指先で何かの文字か模様を描くように宙を切りながら、
「――我、妃なるもの姫護の名に於いて命ずる。
   幽世の扉を開き、西方の守護を担うものよ、我が元へ疾く来たれ。
   古よりの契約と盟約に基づき草薙翔の守護をすべし。
   来たれ、疾く来たれ、護領犬、山輝よ――」
低く、そして凛とした声が静かに辺りに響くと咲の後方の空間がまるで湯葉を捻るように拉げると、獰猛な咆吼をあげながら大きな犬のようなものが飛び出てきた。姿は秋田犬のようないでたちではあるが、大きさは四本足ながら翔の身長と同じ高さがあった。目は燃えるような赤色で、尻尾は二つに分かれていた。
「来たわね、山輝。これより貴方はこの者に憑き、そして護りなさい。」
「謹んで引き受け致します――咲様。しかし――。」
山輝と呼ばれた巨大な犬の化生は咲に平伏しながらちらり、と翔を見ながら続けた。
「未だ、この者咲様の望みを叶えるに相応しい者とは思いませぬ。」
「よい。いずれは知らねばならぬ事。そして知らねば――、死ぬまで。」
表情を僅かにも変えず咲は答えた。
「翔君、貴方はこれから知らなかった事を色々知る事になるでしょう。
 そして生きる為には強くなりなさい。
 ――強くなって…私を殺しに来てね…。」
そう言って咲の表情が僅かに陰りが見えた気がした。
「四神――守護獣は貴方が必要な時には現れ、不要な時には幽世にいます。霊剣と四神 を上手く使って自分の事をもっと知りなさい。」
「待ってくれ…、どういう事なんだ? 俺には何も思い当たる事なんてない。」
「いずれ…解る事よ。それが私の望みでもある――。」
咲がそう言い終わるかどうかという時、咲は霧に隠されるように消えていた。

 ――後に残された翔は呆然としてその場に立ち尽くした。
    一陣の風が吹き、残された麦藁帽子を何処かへ吹き飛ばしていった。
      後に残ったのは虫の声ばかり――。

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