正ちゃんがこんなに美味だとは知らなかったのです!
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2-1
2008-03-09 Sun 17:00

――約束だよ…。
  必ず、必ず私を…、迎えに来てね…。

――二年…なんてすぐだから…。
  ずっとずっと…貴方を想って綺麗になるね…。

――だから、だからずっと私だけを見ていてね…。

――愛してるよ、    ――。


  2 / 遠 い 約 束

 月明かりすら無い闇の中を男はひたすら走っていた。周囲には男の激しい息遣い、そして枯れ草や落ち葉を規則的に踏む音と猛禽類の声が時折聞こえていた。
――一体、何処へ? 
 足取りは定まらず、時折原生する木に当たりそうになる。
「――嫣舜……。」
そう言って男は銀細工の腕輪を握りしめた。


 男はとある寒村に産まれた。貧しい村で、冬に飢える事もしばしばで、唯一宝石の原石と金属が採れる事以外何も目立ったものも無かった。男には将来を誓った女性がいた。名前を嫣舜と言う、普段はとても素朴ではあったが芯の強い女性であった。その心根を表すかのようなまっすぐな漆黒の黒髪と少し切れ目の端整な顔立ちで、男とは幼馴染みだった。 冬の身を裂くような寒さの中、ある満月の夜に凍てついた湖畔で嫣舜が木製の横笛を演奏していた。雲は少し満月にかかり、空気は澄み渡り静寂の空間の中嫣舜の落ち着いた調べが湖畔一帯の空間を支配していた。男は心静かに演奏を聴いていた。
「なあに、お話って?」
一通りの演奏を終えた嫣舜は笛を獣の毛皮で仕立てられた上着の懐にしまいながら言った。
「俺さ…、街へ出ようと思うんだ。」
倒木に腰掛けていた男は少し思い詰めたような顔で言った。
「どうして…? ここの暮らしに飽きたの?」
嫣舜は男の横に腰掛け、男を覗き込んだ。
「違うんだ…、貧しい村だけど、ここは俺の産まれた村だ。そして君の産まれた村だ。容 易く捨てる事なんてできない。だけど――、」
男は少しうつむいて続けた。
「だけど、俺は君の為に生きていきたい――。」
そう言ってそっと、まるで崩れ落ちる灰を抱くように嫣舜を抱きしめた。互いの防寒着がぬくもりを遮るが、お互いの吐息が熱く首筋にかかる。
「愛してる…、自分の事よりも家族の事より、何よりも嫣舜のことを――。」
そう言うと男はそっと嫣舜に唇と唇を重ねるだけのキスをした。
上気した顔で嫣舜は男をまっすぐに見つめていた。
この時男が一六歳、嫣舜は一四歳だった。
男は懐から二つの銀細工の腕輪を出した。一つには赤と黄と緑の猫目石が入れられ、もう一つには桃と青と黒の猫目石が入っていた。
「二年間、街で学んだら帰ってくる。この村がせめて寒い冬でも飢えないよう、そして君 をずっと守れるようになってくるよ。だから――、」
そう言って赤と黄と緑の猫目石の入った腕輪を自分に付け、もう一つを嫣舜に差し出し、
「戻って来たら、結婚して欲しい――。」
と言った。
花が急に開いて香り立つように嫣舜は笑って、
「やっと言ってくれたね。ずっと――、
 ずっと待ってたけど貴方はいつも私の欲しい言葉を伝えてくれないから…、
 どうしようかと思ってたんだから――、莫迦…。」
そう言って今度は嫣舜の方から男を力一杯抱きしめた。
白銀の月が優しく二人を照らし、星空は手を伸ばせば届きそうな程に澄んでいた。

――時は紀元前、遙か三皇五帝の時代。
 世には魑魅魍魎の類が跋扈し、時として人を襲い、また人も化生に抗うべく術を求め、時として神の力を借り奇跡の如く化生を祓い、またある時は救いを求めた。
現代に比べ自然の力は偉大で、人々は自然、そして化生と闇に畏れを抱いていた。

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