正ちゃんがこんなに美味だとは知らなかったのです!
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2-2
2008-03-10 Mon 17:35

 それから暫くしてある天候の良い日に男は都へと向かった。男の門出を祝う為に貧しい村はにわかに活気づいた。
「待ってるからね…、今よりももっと綺麗になって貴方を待つからね…。」
そう言って嫣舜はまた男を熱く抱き寄せた。
 文すら届くかどうかわからない時代で二人を繋ぐものは男が作った揃いの銀の腕輪だけだった。それでも心は繋がっていると信じて疑う事は無かった。
 男は都に付くと宮付きの鍛冶に住み込みで働きながら銀や金と言った貴金属の精練技術や宝石の熱処理や加工技術も学んだ。
 そして、そうした中でも交易というものが自分の故郷にとって大きな助けになると言う事に気付いた。
 宮付きの鍛冶という事は実用も兼ねながら美麗な武器も求められ、その知識が装飾加工にも役立つ、と思った。
 当時は蚩尤と黄帝の戦いが激化し、蚩尤の一族が用いた武器を持ち帰っては研究に使われた。そもそも「五兵」と呼ばれる槍、刀、弓などの現代では珍しくもない武器は蚩尤が伝えたとされる。そのため蚩尤は戦神としての側面も持ち合わせていたと言われている。
 男は朝起きて鍛冶場にて働き、夕方から交易について学び、夜は精練について学んだ。友は無く、酒や色や博打に手を出す事も無かった。男の盲目的な努力も故郷への愛情とひとえに嫣舜への想いから成せる事だった。
 郷愁の感情は少なからずあり、また日々の暮らしも辛くないと言えば嘘になった。それでも少しでも嫣舜にとっての幸せを考えれば学ぶ事、すべき事は沢山あった。それでもどうしようもなく辛い時には銀の腕輪を握り締めて嫣舜の事を想う事で紛らわせた。
 二年の歳月は瞬く間に流れ、男を一際逞しく成長させた。学んだ事から男は故郷にて産出される鉱石を使い、賞品価値のある装飾品として加工し、それを都にて交換や販売する事によって慢性的な食物の不足や暖房の為の燃料に使える、と算段していた。
 帰郷の数日前に黄帝と蚩尤の戦いは黄帝が神の力を借り天候を変え、ついには蚩尤を討った事で終結したと報があり、都は凱旋と勝利の宴で賑わっていた。そんな中で男は来た時と同じ僅かばかりの手荷物と見送られる者もなく、ひっそりと都を後にした。
 
 足取りは速く、故郷へと向かっていた。そして故郷に近づいた時、故郷近くの岩山が夜だと言うのに赤く光っているように見えた。否、光っているのでは無かった――。
 見慣れたはずの村は乾き爆ぜる音を上げて燃えていた――。
 岩山はその炎を反射して赤く見えていただけだった。男は渦巻く炎を避けながら村の中を走る。途中動くものは無く、道には焼けただれた死体や千切れた肉塊が焦げた状態で飛散していた。顔や特徴があるものはどれも知った人間であるとわかった。男は激しい嗚咽を漏らしながら自分の生家へと向かう。
 火の粉を上げながら燃える自分の生家の側に黒く変色した炭のようなものが二つ――。抱き合うような形で横たわっていた。男は泣いているのか怒っているのかも解らず激しく声をあげながら周辺を見回す。
 炎の中、煤こけた銀の腕輪を発見した時、男は半狂乱になり激しく声とも叫びとも解らない絶叫を上げていた――。
――絶望と恐怖と悲壮――、全ての負の感情が男の中で激しく爆ぜていた。
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