正ちゃんがこんなに美味だとは知らなかったのです!
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2-4
2008-03-14 Fri 18:22
「ずっと…、眠ってますね…。」
黒い髪を後で団子のように纏めている少女がぽつりと呟く。
「流れた血の量が多すぎるからの…、ま、どうしてこんな男を拾ってきたのやら…。」
小兵の老人が豊かに蓄えた髭を触りながら呟く。
「それは…、何やら訳ありのようですし…、何よりも未練や怨念を持って亡くなった人間は成仏できずに彷徨うのでしょう? それはあまりに不憫なので…。」
囲炉裏の側で座っていた少女は膝の上に置いた手を握りしめながら言った。
「ま、今は辛うじて命を繋いでおるがどうなるか解らん。
 それに――、それに生き延びた所でこの男はどうするのかの。」
湯飲みに入った酒を大いに呷りながら老人は言った。


男は自らの希望を反映した夢の中に居た。故郷に戻ればそこに幸福が待っているはずだった。嫣舜との慎まやかな結婚の宴――。しかし、その夢はやがて桃の花弁が一面に舞い遮られた。嫣舜が遠く遠く離れていくように見える、咄嗟に男が嫣舜の名を呼びながら手を差し出すが、自分の右手はどこかに落としてきたかのように無くなっていた。
「嫣舜…!」
男は声を荒げて目覚めた。酷い眩暈と頭痛に襲われるが、囲炉裏の反対側に居る人影が軽く「ひっ」と言った声で我に返った。小屋の中にも桃と酒の香りが漂い、僅かながら小川の流れる音が聞こえていた。恐る恐る人影は男の方に近づきながら、
「良かった…、気が付かれましたか。」
桃色の基調とした民族衣装のような衣服は所々茶色の装飾がされていた。目は細めで頬はうっすら赤味が差していた。
「ああ…、ここは…?」
「ここは桃花源と言って、現世の人が桃源郷、と呼ぶ所です。」
「なんだって…、そんな所が…。」
男は呆気にとられた表情になった。
桃源郷――、桃の花が咲き乱れ、いつも春のような気候で川には酒が流れ楽園のような世界だとされる。人々の渇望が生み出した空想の産物だと男は思っていた。
「申し遅れました、私は朱梛と言います。」
そう言いながら男の方へ向かおうとすると足下にあった徳利を引っかけ躓きそのまま男の方へ倒れてきた。男は咄嗟に受け止めようとした時、自分の右手が無い事に気付いた。
「あ…、すいません。」
朱梛は耳まで真っ赤にしてすぐに男から飛び退けたが、男は右手が無く、そして時折疼く痛みが自分が感じた地獄のような光景が現実のものであった事を認めざるを得なかった。それはまるで触れただけで切れてしまいそうな刃物を喉元に突きつけられている感覚に良く似ていた。燃え落ちる村も、友や親の死も、そして嫣舜も――。男は大切な事を思い出した。焼け跡から見つけた腕輪、自分のものは右手と共に消えてしまったが、嫣舜のものであった腕輪は自分が持っていたはずだった。
「腕輪…は、知らないかな?」
男は照れている朱梛に構わずに訊いた。
「腕輪ってのはこれの事かのー、相当強い力で握ったままじゃったから剥がすのに苦労したぞい。治療に邪魔なんで儂が預かっておったわ。」
男の背後には何時の間にか小兵の老人がいた。そう言って手渡された腕輪は煤けていたのが嘘のように美しく磨かれ、傷も無くなっていた。
「これは…、貴方は一体…。」
「先生、何処にいってらしたんですか!」
朱梛が老人の所に駆け寄って言う。
「はは…、ちょっと酒を汲みにな…、儂は憬惺。世捨て人よ。」
「そんな…、道術、医術、果ては宿曜まで通じて天界の軍師までされていた方が…!」
「宮仕えはもうまっぴらさね。今はただの飲んだくれ爺じゃよ…。」
憬惺と名乗る老人は真っ白い髭を撫でながらにたりと笑った。
「導師様、ですか?」
老人の横で朱梛がこくこくと激しく首を上下に揺すっていた。
「私の命を救って頂き有り難く思います。無礼とは思いますが…、出来れば私めに退魔の法を教えて頂けないでしょうか!」
男はその場に傅き憬惺に向かって言った。腹の底から声を絞り出すかのような意気だった。
「残念ながら、それはできん。お主、仇討ちを考えておるのだろう? 折角拾った命だ…、しばらくここに逗留して構わないから傷を癒しながら良く考えてみるがいい。お主が生き残ったと言うことは生きて何かをせよ、という天命だとは思わぬか?」
憬惺はそう言うと徳利の酒をそのまま呷り呑んだ。
「それは解りますが…、それでも私にとってはそれが全てなのです…。」
「仇討ちなんてやめとけ、やめとけ…、お主は普通の人の身には入る事すら叶わぬ場所に居るのだから少しは楽しんだらどうだ? ま、朱梛のような精霊風情では恋心も沸かぬかの?」
白い髭に隠れた口を大きく開けて豪快に憬惺は笑う。
「せ、先生…。」
朱梛はさらに指先まで茹で上がったように赤くしてその場所から立ち去ってしまった。
「しばらく、此処に留まり今後の事を考えさせて頂きます…。」
男はそう言うとその場で深々と頭を下げたが、その表情は苦虫を噛みつぶしたような表情だった。
ちょっと長いかな、と思いつつも暫定アップ。
実は4章の内容なのですが、3章への伏線が後で来るのはおかしいので2章の内容としました。
こうした感じで自分の文章は骨格を作ってからアレコレ手入れするので確定しにくいのが難点です。
マジで意見とかそういうのがモチベに直結するわかりやすい人間なので、
最近どんどんモチベ下がってますので更新は当分ないかもです。
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