正ちゃんがこんなに美味だとは知らなかったのです!
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2-6
2008-04-09 Wed 20:27
 憬惺の住む庵に戻った時、丁度憬惺が竹を薄く削ったものを束ねた書簡を眉間に皺を寄せて読んでいた。困ったような顔をしてはいるが、いささか微笑んでいるようにも見える。
「先生、出仕の要請ですか?」
慣れた手つきで茶を煎れながら朱梛は訪ねた。
「うむ、まーた猿の小僧が天界で悪さをしているのでなんとかして欲しいんだと。」
「あらあら、困ったものですね。きっと寂しいんですよ。」
朱梛はそう言うとくすりと笑った。
「そんなに和やかな話なんですか?」
磬鸞は朱梛に出された茶を飲みながら聞いた。
「うむ、岩から産まれただけに愛を知らず、情も知らぬ。故に暴れ寂しさを紛らわせているようにも思えるの…、しかし天界の神仙が手を焼くとは困ったもんじゃのう…。」
そう言うと憬惺はじっと磬鸞を見つめると、
「仕方がない。儂はしばらく行って仕置きして来るかの…、お主、どうしても儂に術を教わりたいと言う気持ちは変わらぬのか?」
「はい。人に仇なす化生を全て滅するのが私の願いですから――。」
磬鸞は真っ直ぐな瞳で憬惺の瞳を見つめた。
「恩讐の為では無いと言うのだな?」
「それは――、まだ解りません。」
憬惺は片眉を上げながら溜息を一つついて、
「仕方ないの…、では、儂が留守の間に二つの事をやってみせよ。一つは義手を動かせるようになること。もう一つは――、お主の生について証明して見せよ。」
憬惺はそう言うと白眉を撫でながら外に出ていった。磬鸞は後を追おうとしたが姿は何処にも見あたらなかった。自らの生について証明せよ、とはどういう事なのか。磬鸞は主無き庵にて立ち尽くしていた。

 桃花源は広くあったが、ほんの小さな菜園が憬惺らの手によって整えられていた。磬鸞はその菜園を慣れぬ手つきで耕し、いくつかの菜を採り日々の糧とする事にした。持ち帰った菜は何時の間にか朱梛が料理してくれていた。
「まだ、動きませんか――?」
汁を椀に注ぎながら朱梛は磬鸞に聞いた。
「動かないな。どうすれば動かせる事ができるのか…。」
左手で椀を受け取り独り言のように尋ねた。
「以前先生に聞いた事があるのですが、人間というのは幽世と現世の両方の存在だと言われています。現世の存在を投射したイメージを幽世の姿に持つのだそうですが、逆に幽世の存在が逆に現身に影響を与える事もあるそうです。例えば磬鸞さんが幽世の存在で右手が『存在』するものであると認識できれば動かせる事ができるかもしれませんね…。」
朱梛がそう磬鸞に言うと汁椀を置き考えていた。
「その逆もあるように幽体が傷つけばその箇所になんらかの問題が出るらしいですし、幽体が死ねば現身も死ぬ事すらあるそうですから…。」
なるほど、と磬鸞は菜を口へ運びながら頷いた。囲炉裏の炎が僅かに朱梛を顔を照らしその桃色の顔がより一層紅みを増して見えた。
「どうして、君はそんなに俺に良くしてくれるんだい?」
磬鸞は食べることを止め朱梛をじっと見つめた。
「どうして――、ですか? あまり深く考えた事なんてないですよ。私が貴方の為に出来る事をする。その事に理由は必要ですか?」
磬鸞は理解出来なかったが、一つの事を思いだした。かつて自分が嫣舜に対してそうであったように、誰かに何かをする、という事が喜びであったと。
 炎は変わらずにゆらゆらと薄く揺れていた。
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